「今日は二人が来るから、お料理頑張っちゃた。好きなだけ食べてね、二人とも」
山から戻ったわたしたちの前には、涼夏さん手作りの料理が並べられていた。
大皿に盛られた大量のお刺身に、手打ちなのかおそばまで付いている。
しかも、その隣の大皿にはこれまた大量の天ぷらと――まだまだあるからと言って茶碗蒸しを差し出してきた涼夏さんに、わたしはきょとんとした顔を向けてしまった。
「こ、こんなに食べられません……」
「ごめんなさい……その、普段この家にお客様が来ることって、あんまりないから……張り切ったら、作りすぎちゃって……」
そう言って頬を染める涼夏さんは、どことなく可愛い。
さすがに全部は無理そうだけれど、少しずつだったら全種類制覇くらいはできるかもしれない。
わたしは祥子と互いに目配せをして、箸を手に取った。
「いただきます!」
「あ、た、食べきれなかったら無理はしないでね……? 残ったら後で隆造にでも持たせるわ……ああ、恥ずかしい……あぁ、そうだわ」
頬に手を当てて恥ずかしい……と繰り返していた涼夏さんだったが、何かを思い出したように台所に戻ると、おちょこのように小さなグラスに入った液体を私たちの前に差し出した。
ほのかに甘くて、白く濁った――これは、お酒だろうか。
「涼夏おばさん、これなぁに?」
グラスをつまみ上げながら祥子が尋ねる。
「それは御神酒みたいなものなの。村長にね、二人が巫女役をやってくれるって言ったら、大層喜んでいらして……昔から、巫女になる女性はお祭りの前にそれを飲むのよ。二人とも、お酒は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、それを一口飲んでみて。明後日の神事までは食事の前に必ずこれを飲んでもらうわ」
言われるがままに飲み干すと、香りと同じく少し甘い。
どちらかと言えば、甘酒のような飲み心地だった。
もう少し飲みたい……とも思ったが、出された量はちょうど一口で飲み終わってしまう。
「ふふ、ありがとう。飲み終わったグラスは片付けるわね」
そう言ってグラスを下げていく涼夏さんの――背中が、なぜかぐにゃりと曲がったような気がした。
もしかして、疲れているのかもしれない。
祥子は早速目の前の料理を食べているし、飲んだことのないお酒を飲んだから酔っ払ってしまったのかも。
わたしはせっかくの豪勢な食事もそこそこに、疲れてしまったからと部屋に戻った。
――部屋の位置は、祥子の部屋の二つ隣だ。
色々思うこともあったけれど、旅の疲れが出たのか、わたしはそのまま布団に突っ伏して眠ってしまった。
(喉、渇いたなぁ……)
それから、どれだけ時間が経っただろう。
喉の渇きを覚えたわたしは、暗い廊下を歩きながら台所を目指していた。
こんなことなら水差しでももらっておけばよかった――そんなことを考えていると、台所より少し手前の部屋に、ぼんやりと明かりが灯っている。
「……ね、――――だもの」
(……涼夏さん?)
それは紛れもなく、涼夏さんの話し声だった。
やや甘ったるいような声が、ぼんやりとした明かりの中から聞こえてくる。
(これ、は……)
聞いてはいけない。見てはいけない。
わたしの頭の中は確かにそう警鐘を鳴らしているのに、昼間の祥子の言葉が頭によぎる。
――隆造さんと、涼夏さんは。
わたしは……まるで、誘蛾灯に吸い寄せられる羽虫のように、そろそろと扉に近づいた。
「んじゅっ……んぐ、くぅ……」
ぐじゅっ、くちゅっ……という、なにか濡れたものが動くような音がした。
わたしは、ほんのりと光が漏れるドアの隙間に顔を近づけて――ハッと口元を押さえた。
「んちゅっ――じゅるるっ……んはぁっ……ほら、また勃った……ふふ、隆造ってば堪え性がないんだから――」
「ッ……涼夏、さんッ……」
「うふふ……ぢゅるるるっ……ほぉら、挿入れたいんでしょう? わたしのグズグズドロドロのおまんこに、勃起ちんぽ入れたくて仕方がないんでしょう!」
太くそそり立つ……あれはきっと、隆造さんのペニスだ。
それを艶めかしい仕種で咥えこみ、舌でベロベロと舐め――卑猥な言葉で隆造さんを責め立てる涼夏さんは、昼間の楚々とした様子とはまるで違っていた。
(二人は……やっぱり、恋人同士だったの……?)
さも美味しそうにペニスを頬張っていた涼夏さんは、やがてその堅い肉棒から唇を離した涼夏さんは、自らがその上に跨がって、嬉しそうな悲鳴を上げた。
「あっっはぁぁ……はぁぁぁっ……! 入ってきたァッ……! ゴリゴリで凶悪な隆造のちんぽっ!! これよぉ……わたしもぉ、コレじゃなきゃだめぇぇぇぇっ……!」
「ぁ――が、っ……ァ、涼夏さんっ……!」
「ふぅぅぅんっ……! んちゅ、ちゅるっ、んむぅぅぅ……むはぁっ……、ぁ、あぁぁんっ……!」
ぐぽっじゅぽっ、がぽっ……淫猥な水音と、互いの肌がぶつかる音――そしてかわされる、唾液にまみれた濃厚なキス――目の前で見せつけられる濃厚なセックスにわたしの目は釘付けになっていた。
浅黒い隆造さんの腕が、白くほっそりした涼夏さんの体を押さえつけ、まるで動物のように交わっている……。
その姿に、わたしの下肢はじゅんと潤った。
(やだ、わたしったら……)
これは、見てはいけないものだ。
わかっているのに、まるで貪るような性交から目が離せない――。
そっとショートパンツの中の下着に手を這わせると、そこはしっとりと濡れている。
くちゅっ……とぬめったそこに指を突き立てながら、わたしはひたすら二人の情交を見つめていた。
「あぁっ、はっ、ぁぁああぁ……! いいわっ! いいわよ隆造……! もっと突いて……極太漁師ちんぽでズコズコ突いてぇぇぇっ!!」
「おっ、おぉぉっ……! ぁ、がっ……涼夏さん……ッ! もう、もう出るっ!」
白い喉を反らせて絶頂を迎えようとする涼夏さんを、隆造さんのピストンが更に追い詰める。
パンッ! パンッ! という生々しい音と共に、涼夏さんが歓喜の声を上げる瞬間――。
(……あ)
目が。
目線が。……涼夏さんの、蕩けた瞳がこちらを向いた。
一瞬だけではあったけれど、確かに彼女は私を見たのだ。
「っ……!」
見られた。見られてしまった。
のぞき見をしていたのはわたしの方だ。ハッと醒めた頭で廊下を戻り、頭から布団を被った。
暗い部屋の中でぎゅっと目を閉じていると、先ほどの激しいセックスが思い起こされる。
獣のように涼夏さんを犯す隆造さんの姿。
誘い込むように彼のペニスを咥えていた涼夏さん――。
「ふっ……うぅぅ……ぁ、ぁんっ……」
火照った体に宿った熱を放すため、濡れそぼった蜜壺に指を当てる。
ぐちゅりと指を飲み込んだそこを、わたしはしばらくの間独りでなぐさめていた。
つづく……
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